【書評】睡眠は遺伝だった!?「スタンフォード式 最高の睡眠」(西野精治)

睡眠に関する悩みはおそらくほとんどの人が経験するテーマではないでしょうか。夜中寝つけなかったり、睡眠不足による昼間の眠気に襲われたり、日常から切り離せない「睡眠」について科学的に分析し、その対策まで網羅されている面白い本と出会ったので、簡単にサマリして紹介します。もしご自身の「睡眠」について少しでも改善したいと感じている方がいらっしゃれば、読み進めていただければ幸いです。


スタンフォード式 最高の睡眠
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1.よく寝るだけではパフォーマンスは上がらない
2.なぜ人は「人生の3分の1」も眠るのか
3.夜に秘められた黄金の「90分」の法則
4.スタンフォード式 最高の睡眠法
5.超究極!熟睡をもたらすスタンフォード覚醒戦略
6.「眠気」を制する者が人生を制す
7.最後に


1.よく寝るだけではパフォーマンスは上がらない
 睡眠時間が足りないことによって、簡単には解決しない深刻なマイナス要因が積み重なっていくことを「睡眠負債」と言うそうです。睡眠負債は、1秒足らずから10秒程度の眠りを引き起こすような「マイクロスリープ(瞬間的居眠り)」を誘発します。これは、脳を守る防御反応であるとも言われています。(私も仕事中、特にランチ後につよい眠気に襲われます。。)

 また、日本は世界一「睡眠偏差値」が低いと言われているそうです。日本人の平均睡眠時間は、6.5時間(東京都民は5.6時間)だそうです。比較対象として、アメリカ人は7.5時間、フランス人は8.7時間です。日本人は、「早起きは三文の得」というように、早起きする人が多い印象ですね。

 さらに、理想の睡眠時間は遺伝子で決まると言われています。睡眠時間が短くても日中眠くならない人のことを、よくショートスリーパーという言葉で表現しますが、あれも遺伝だそうです。彼らは生体リズムに関係する「時計遺伝子」に変異があると言われています。(完全に夜型の私は8時間以上眠らないと大抵眠くなるので、ショートスリーパーの方々が心底うらやましいです。。)

睡眠負債、いわゆる「眠りの借金」は寿命を縮める
 ・・・短時間睡眠が肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病に直結するそうです。昼寝をし過ぎるのも返って逆効果となることがあり、1日1時間以上の昼寝が認知症リスクや糖尿病リスクを高めるというデータもあると本書の中で紹介されています。私も本書を読んで衝撃的でしたが、「昼寝」は眠り過ぎると夜眠くなくなってしまうので、シンプルに見えて難しいテーマですね。個人的に、大学受験の勉強に勤しんでいた時期に、机の上でつっぷして15分くらい眠るのが一番効果的に感じたので、ベッドにがっつり入って眠る昼寝は長くなりやすく、あまりよくないのかもしれません。
2.なぜ人は「人生の3分の1」も眠るのか
 睡眠トラブルのスパイラルである「睡眠ジャンク」から抜け出すためには、「正しい情報収集と理解力」が必要だそうです。睡眠薬に依存しないためには、「認知行動療法」が鍵となります。

✓ 正しい知識を得て理解を深める(認知)
✓ 翌日の活動の質・パフォーマンスを上げるための行動づけをする(行動)
 正しい知識としておさえておきたいことの一つとして、大量のアルコールは眠りを浅くし、睡眠の質を確実に落とすと言われています。興奮状態となり眠りが浅くなってしまい、場合によっては夜中にトイレに行きたくなるため、目を覚ましてしまう可能性もあります。
 ※少量のアルコールは睡眠の導入を目的とすれば問題ないとも、本書の中で紹介されています。私も眠るときよく考え事をしてしまうので、ウィスキーやウォッカウィルキンソンやソフトドリンクで割って一杯だけ口にしたりしています。脳のスイッチをオフにするにはちょうどよいです。

 また、人生の3分の1を占める睡眠において、良質な睡眠には「5つのミッション」が課せられるそうです。

① 脳と体に「休息」を与える。
 ・・・副交感神経優位の状態にする。
②「記憶」を整理して定着させる。
 ・・・記憶の整理だけでなく、イヤなことや不要なことを忘れる。
③「ホルモンバランス」を調整する。
④「免疫力」をあげて病気を遠ざける。
⑤「脳の老廃物」をとる。

①と②はよく知られていることですが、③~⑤は結構重要な役割にも関わらず意外と知られていませんね。
 睡眠の質を妨げる睡眠時無呼吸症候群は、「致死率40%」と言われていますが、身近な睡眠障害でもあります。日本人の場合、痩せていても睡眠時無呼吸症候群になります。アジア人は顔が平たく、下あごが奥まり、気道がもともと狭いからだそうです。「いびき」、いわゆる口呼吸は睡眠の質を下げると言われています。鼻をふさがれ、過剰に気道を確保しようとすると、歯並びが悪くなることにもつながります。私はいびきは(家族や友人曰く)お酒をたくさん飲んだ時くらいしかしないらしいのですが、歯ぎしりをよくしてしまいます。歯ぎしりも歯に悪影響がありそうですよね。


3.夜に秘められた黄金の「90分」の法則
 最初の90分間(眠りのゴールデンタイム)のノンレム睡眠(深い眠り)は、睡眠全体の中でももっとも深い眠りだそうです。グロースホルモン(成長ホルモン)がもっとも分泌されるのも、最初のノンレム睡眠が訪れたときと言われています。グロースホルモンは大人の細胞の増殖や正常な代謝を促進させる働きがあります。明け方になるとレム睡眠(浅い眠り)の出現時間が長くなるそうです。最初の眠気のタイミングを絶対に逃してはなりません。眠くなったらとにかく寝てしまわないと、その後深い眠りは訪れず、いくら長く寝てもいい睡眠にはならないそうです。たしかに、休日寝だめしようとして昼過ぎくらいまで寝ても、夕方また眠くなるという経験を私も何度かしたことがありますね。

 健康な人の場合、目を閉じてから10分未満で入眠します。ショートスリーパー以外の普通の人は6時間以上眠るのがベストだそうです。よく90分の倍数分眠ればよいという都市伝説を聞いたりしますが、スリープサイクルは1周期あたりおよそ90~120分と個人差があるそうです。つまり、「合計して何時間眠ったか」ではなく最初の90分を「黄金の90分」にすることで大きなメリットがあります。大まかに以下の3つのメリットがあると本書の中で紹介されています。

最初の90分が「黄金の90分」になると・・・
✓ 寝ているだけで「自律神経」が整う。
✓「グロースホルモン」が分泌される。
✓「脳のコンディション」が良くなる。
 「黄金の90分」を手に入れるためには、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きることが重要だそうです。ベッドに入るのは日付が変わる前、できれば23時頃。遅くまで仕事をする場合でも、眠気があるならまず寝てしまい、黄金の90分が終了した最初のレム睡眠のタイミングに起きて、資料作成にとりかかるほうが睡眠の質はよくなるそうです。私も遅くまで作業することがたまにありますが、諦めて翌朝に持ち越したらすぐに妙案が思いついた、なんてこともしばしばあります。

 さらに、「体温」と「脳」に眠りスイッチがあると本書では解説しています。スムーズな入眠には深部体温(体の内部の体温)と皮膚体温(手足の温度)の差が縮まっていることが鍵となるそうです。深部体温は日中高くて夜間低くなります。皮膚体温は逆に昼に低くて夜間高くなります。入眠時にはまず手足から熱放射が起こり、続いて深部体温が下がります。脳が興奮していると、この深部体温も下がりにくくなるそうです。


4.スタンフォード式 最高の睡眠法
 寝つきが良い人と悪い人の差はわずか2分だそうです。これには私も驚きました。つまり、寝つきの良し悪しが問題なのではなく、「昼間眠気が強い」などの日中の覚醒度の低さが睡眠の質の良し悪しを判断するポイントになるとのことです。

 睡眠クオリティを上げるには、3つの「体温スイッチ」があると本書で紹介されています。

✓ 就寝90分前の入浴
 ・・・40℃のお風呂に15分入ると深部体温はおおそ0.5℃上がる。深部体温は上がった分だけ大きく下がろうとするが、0.5℃上がった深部体温が元に戻るまでの所要時間は90分のため、寝る90分前に入浴を済ませておけば、そのあとさらに深部体温が下がっていき皮膚温度との差も縮まり、スムーズに入眠できる。

✓ シャワーよりも効果的な足湯の熱放射
 ・・・足の血行をよくして熱放射を促せば、入浴と同等の効果がある。

✓ 体温効果の調節
 ・・・湿度が高すぎると発汗しなくなり、手足からの熱放射を妨げられ、眠りが阻害される。室温が高すぎると過剰な発汗による熱放射が起き、体温が下がりすぎて風を引いてしまう。
 もう一つの眠りスイッチである脳は「いつものパターン」を好む性質があるため、「睡眠のルーティン」を作ることが大切だそうです。「モノトナス(単調な状態)」にすることは、眠るために効果的な脳のスイッチであると言われています。いつも通りのベッドで、いつも通りの時間に、いつも通りのパジャマ、いつも通りの照明と室温で寝る。(元メジャーリーガーのイチロー選手が想起されますね。)寝る前の娯楽は、犯人が気になるミステリーよりも退屈な本を選ぶこと。ハイウェーで眠くなる原因の一つは、風景が変わらないことだと論じられています。たしかに仕事でもなんでもクリエイティブな作業より反復作業のほうが圧倒的に眠くなりますよね。 


5.超究極!熟睡をもたらすスタンフォード覚醒戦略
 朝起きてから眠るまでの行動習慣が最高の睡眠を作り出し、最高の睡眠が最高のパフォーマンスを作り出す。これが、「覚醒」と「睡眠」の良循環であるとのことです。

  覚醒中において、「光」と「体温」の2つのスイッチを押すことが鍵だそうです。

✓「光」
 ・・・人間はおよそ「24.2時間」のリズムで動いており、地球の24時間のリズムに同調できるのは光があるため。体温、自律神経、脳やホルモンの働きも、光がないとリズムが崩れて調子が悪くなってしまう。朝は太陽の光を必ず浴びる習慣をつける。
✓「体温」
 ・・・覚醒時はしっかり体温を上げてスイッチオンにしておく。
 本記事では割愛しますが、書籍では11の覚醒戦略が紹介されています。たとえば、「アラームは2つの時間でセットする」「咀嚼力で眠りと記憶を強化する」などです。覚醒時(起きている時間)の質を高めることで、眠りを良質なものにする、という逆説的な発想が個人的にめちゃくちゃ面白かったです。


6.「眠気」を制する者が人生を制す
 眠気に襲われて困る状況として、大きく分けて3つのパターンがあります。

✓ 朝起きても眠気が消えないパターン。
✓ 昼食後、眠気に襲われる「アフタヌーンディップ」のパターン。
✓ 日中、たとえば退屈な会議中にやってくるおなじみの「眠気」。
 実は、昼食は午後2時頃に起きる眠気の襲来には関係ないそうです。私もこれは完全に誤認していました。ランチ後に訪れるのは、「眠気とは違う倦怠感(けだるさ)」だそうです。たしかに、食事を取れば眠くなるというロジックであれば、朝食後や夕食後も眠くなりますよね。ですが、あまりに重い食事をとると血糖値にも影響が出て、極端な場合はオレキシンと言われる覚醒物質の活動を抑えてしまうこともあるそうです。

 会議で眠くなるのは、科学的に何か根拠があるわけではありませんが、日本の会議が退屈だからと本書では論じられています。アメリカ人は会議で発言しない時点で参加してる意義を問われたりしてしまうので、積極的にならざるを得ない状況になり、眠気に襲われにくいそうです。たしかに、私がサンノゼの語学学校で短期のボランティアをしていたとき、現地の先生たちから「君はここに何をしにきているの?」とか「何を伝えたいの?」とか質問を浴びせられたのがつよく印象に残っています。


7.最後に
いかがだったでしょうか。本記事で紹介した内容は書籍の内容のほんの一部です。この記事を読んで少しでもご自身の「睡眠」を改善したいという思いをお持ちいただけたら、ぜひ書籍をお読みいただくことをお勧めします。本記事では割愛しましたが、「睡眠」における様々な悩みに対する具体的な対策が分かりやすく書かれています。今回紹介した本を以下に掲載しておきます。

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↓↓マンガ版になります。こちらも読みやすいかと思います。

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※最後までお読みいただき、有難うございます。本記事の文章は個人の解釈に基づいて記載された内容であり、事実や最新の情報と異なる場合がございます。ご指摘・ご意見等ございましたらお気軽にコメントください。本記事が少しでも皆様のお役に立てておりましたら幸いです。